パリ南西に位置する15区の、とりとめて何もない静かな街に
コラム「ティーカップの中のオペラ」を書いてくれている
漆崎良枝さんと部屋をシェアして暮らしていたころ、
近所の小さなお肉屋さんの店頭にいつも「早く食べてよ〜」と
うなだれる鴨が「ぶらん」とぶらさがっておりました。
日本からパリに遊びに来ていた料理好きな私の従姉妹と3人で
買い物に出た時に、そのお肉屋さんの店頭でうなだれた鴨と目が合い、
あの鴨を買って家で料理をしよう!ということになりました。
良枝さんの持っていたレシピ本に鴨の料理が載っていたので、
それを見ながら、みんなで作った「鴨のソテー クリームソース」
なるものが大変美味しく出来上がり、作る時の手間も合わせて、
今でも記憶に残るほどの味でした。
ですが、「鴨をさばく」というのは、なかなか“至難のわざ”でした。
構造はもちろん、普通のとり肉と同じです。
簡単にご説明すると、
1:首を落とす。
2:もも肉の関節を外して、
3:付け根に切り込みをいれ両脚のももを外す。
4:背中に切り目を入れて、
5:両胸肉を骨にそって背中から2枚に切り分ける。
すると、もも肉が2枚、胸肉が2枚の計4枚に切り分けることができます。
そして、4枚以外には、「首づる・手羽先・背骨」がとれるので、
それらはフォン(ソースを作るためのベースの出し汁のようなもの、
ブイヨンよりも濃厚)を作るのに使ったりします。
この時
「2:もも肉の関節を外して、」
と
「3:付け根に切り込みをいれ両脚のももを外す。」
の段階でお目見えする、もも肉の付け根に
【ソ・リ・レス】という、日本のフレンチの厨房においてもこの名で
お馴染みの「部位」があります。
ソリレス。
それは、とても小さく、クルミほどの大きさの肉の塊で、大変旨味が
凝縮され、肉質は締まった美味しい部位です。
言葉の響きがなんだかステキで、すぐに覚えた部位の名前でした。
その頃、もしパリで犬を飼っていたら、私の犬の名前は
『ソリレス』だったに違いありません。
左右のももに1つずつ、合わせて2つ付いていますが、
うっかりすると、骨にくっつけたまま取り忘れてしまったり、
小さすぎて食べ忘れてしまって、捨ててしまったりするかもしれません。
そんなに美味しい部分をうっかり捨ててしまうなんて、
おバカさんな話しです。
ということで、
ソ・リ・レス(sot-l'y-laisse) とはフランス語で
「おバカさんは、それ(こんなに貴重な部分を)を残す。」
という意味だったのです。
あぁ、パリの街で、声の大きい私が、犬を飼わなくて良かった。。。(ホッ) |