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ティーカップの中のオペラ

スペシャルコラム Vol.1 2004年10月6日 フィガロ


腰掛ける所に膝掛けあり。寒い。しかしストーブを付ける程ではないな。でももう少し温まりたい・・・こんな時はミルクティーに限る。濃いめに淹れたウヴァやアッサムにミルクを足す。スパイスを加えてチャイにするのもいい。少し気分を変えたい時はアールグレイをミルクティーにしてみる。マニッシュなミルクティーとでもいうか、一風変わった、癖になる味なのだ。
オペラティーのアールグレイは、その名もフィガロ。なるほどね、ストレートでもアイスにしてもミルクを加えても美味しいというのだから、まさに「町の何でも屋」。そう、フィガロといえばロッシーニの『セビリャの理髪師』にモーツァルトの『フィガロの結婚』。陽気で、お調子者で策士のフィガロ。
この2つのオペラ、序曲がとにかくいい。いやが上にも高まる期待感。その先にあるのは窒息しそうなロココの優美か悪戯か、なんてね。とにかく、現実から離れられる瞬間なのだ。

2作とも原作はフランスの劇作家ボーマルシェの戯曲で、特に『フィガロの結婚』は革命前夜のパリでは上演禁止になったという曰く付き。権力を笑いにするのは常套手段。しかし時は18世紀末、芸術はいまだ王侯貴族の為にある時代だ。それでも自由奔放なボーマルシェは、投獄覚悟で民衆が求めるフィガロを書いた。
そのドイツ語版をウィーンにいたモーツァルトが偶然目にした。そして極上の音楽をまとったフィガロが生まれたというわけだ。ウィーンでの初演から7年後の1793年。このオペラがパリに凱旋帰国を果たしたのは、いみじくもルイ16世が、そしてマリー・アントワネットが断頭台の露と消えた年だったのだ。なんて史実はさておき、優雅なロココの舞台芸術に思いを馳せつつ、 一杯のミルクティーを飲めば、日常会話がレチタティーヴォになりますよっと。


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